11 松に桜の花が咲く



 京都の真真ん中、南北は今出川通りから丸太町(マルタマチ)通りにかけて、東西は烏丸(カラスマ)通りから寺町通り。
 市民の憩いの場として親しまれている京都御所。

 正しくは京都御苑と言い、御所は御苑の中にある天皇・皇族の住まいの事なのだが、京都人は全体を単に御所と呼ぶ。
 道を尋ねるとき京都御苑などと聞くと教えてもらえない事があるが、イケズ(いじわる)ではなく、本当に判らないのである。

 御所は知る人ぞ知る隠れた桜の名所であるが、中でもこの桜松を一番に上げたいと思う。
 松の木に桜の花が咲く。しかもこの松の木は遠の昔に朽ちて倒れたままに捨て置かれている。


 元は松の老木の虚(ウロ)に鳥が運んだ種が成長したもので、桜の木の幹は松に隠れたまま枝を張って桜の花を咲かせ異趣を誇っておった。
 幹の中がすっかり空洞になるほど年老いた松の木は1996年の春の大風の夜に根本から朽ちて倒れてしまった。このまま撤去されて桜松も見納めかと思ったが、御苑を管理する人々の風雅な計らいのおかげで倒れたままではあるが今も春には花を咲かせている。


散策のおりに一度訪ねてみられる事をお勧めする。   TY
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