13 御所のけもの道

 京都の街中にけものみちがある、しかも御所のど真ん中に。などと言っても果たして何人の方がうなずいて下さるだろう。
 梅雨の中休みのうららかな午後、木洩れ日を楽しみながら小径を歩む。
 立ち止まりまた木陰でひとときの休息をとる。玉砂利の照り返しが眩しく陽炎を誘う。

 新緑をわたる風も爽やかな初夏の御苑。
 南北およそ1.2キロのほぼ中央、蛤御門(はまぐりごもん)から京都御所と大宮御所の間を抜けて寺町通り広小路に抜ける玉砂利を敷き詰めた広場に、幅20センチ余りの一本の筋が続く。そこだけが掃き清められたように。

 時折通る自転車がまるで標識に従うかのように走っていく。けもの達が一筋の道を通うように。ある人は「御所の一本道」と呼ぶ。
 時折双方から走り来て行き交うとき、道を譲るのは老若を問わず男性の方のようだ。

 ハンドルを取られそうな玉砂利のなかに、自然に出来た自転車道である。近くには桜の花を咲かす松の木があり、名を「桜松」と言う。1996年の春の大風の夜に根本から朽ちて倒れたが、以降も横たわったままで花を付ける。健気な木である。
 
 散策のおりに一度訪ねてみられる事をお勧めする。   

 TY

 


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