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楢 の 小 川
真夏の昼下がり、街中の喧騒を離れ上賀茂辺りを歩いてみる。
大田の沢の杜若(かきつばた)も花の時期はとうに過ぎ今は青々とした葉が水面を覆っているばかり。
由緒ありげな社家の家並みを縫うように、清らかな流れを遡っていつしか上賀茂神社(賀茂別雷神社)の境内へとたどり着く。
藤原 家隆が歌に詠んだ楢の小川(ならのおがわ)は、上賀茂神社本殿脇より流れる御手洗川と御物忌川が合流し、神域を外れるまでの清流を言う。
社家町を流れる下流部分は明神川と呼ばれている。
木漏れ日の落ちる岸辺に腰を下ろしての読書のひと時は、川面をわたる風の涼しさと相俟って水遊びする子供たちの歓声さえも心地よく思えてくる。
傍らに神馬堂のやき餅など置いておくと時間の経つのもいつしか忘れてしまう。贅沢な時の過ごし方である。
お気に入りの文庫本をポケットに忍ばせて、散策のおりに一度訪ねてみられる事をお勧めする。
TY
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ひーらいたひーらいた
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