9 土用の丑
 土用の丑の日には鰻を食べる。
 夏の暑さを乗り切るための風習ではあるが、一説には江戸時代に平賀源内が、夏場売れずに困っているうなぎ屋に頼まれて販売促進に考え出したのが初めと言われている。

 下鴨神社では土用の丑に一風変わった神事が行われる。
 本殿の東に湧き水を湛える御手洗(みたらし)池があり池の畔には御手洗社が祀られている。
 夏の土用の丑の日の「みたらし祭(足つけ神事)」は素足で池に入り社前に灯明を供え息災を祈願するもので、社前で戴く神水の美味しさと相俟って暑気払いには最高のひと時でもある。

 下鴨神社の有力な禰宜の家に生まれながら、父の早逝によって神官への道を閉ざされた鴨長明が、下鴨神社への憧憬の想いを秘めながらも失意のうちに出家した後、幾有余年の時を経てこの地を訪れ

右の手も その面影も 変はりぬる   
    我をば知るや みたらしの神

             と詠んだのはこの神のことである。

 またこの池の黒い小石は「かん虫封じ神石」としての霊験があると言われ、お札と共にこの日に限り授与されている。

「みたらし団子」はこの池に浮かぶ泡を模ったもので、串に刺す団子の数も串の先に一つ、間を空けて四つの合計五つが正式である。
 これは後醍醐天皇が行幸の折、御手洗池で水をすくったところ、泡がひとつ浮き、やや間をおいて四つの泡が浮き上がった、との故事に由来するといわれている。


平成16年は7月21日より25日まで行われる。
興味をお持ちの向きには訪ねて見られることをお勧めする。
           TY
【土 用】
 古代中国から伝わった陰陽五行の説では天地の間のすべての事柄は『木』『火』『土』『金』『水』から成り立っており、季節の移ろいもこれまた然り。

『木』 樹木の生長発育する様を表わし、その季節は春
『火』 火の如く灼熱の性質を表わし、言うまでも無く真夏の象徴
『金』 冷徹・堅固・確実な性質を表わし、秋を象徴する
『水』 生命の泉、胎内と霊性を兼ね備え、春の芽生えを待つ冬の象徴

『木、火、金、水』が四季を表すのに対して、『土』は万物を育成・保護する性質を有しており四つの季節が交じり合わぬよう、それぞれの季節の変わり目の最後の18日間、合計72日が充てられ五行がほぼ均等の日数に分けられている。

このように土用は年に四回あるが一般に土用と言うと夏の土用のことである。
 
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